日向産蛤碁石について
明治26年頃に碁石の材の蛤が発見されて以来囲碁界に大きな発展をもたらしました。この蛤はスワブテ蛤貝と称して日向の小倉ヶ浜の特産のものです。
スワブテ蛤貝とは、日向の小倉ヶ浜でのみ生息している特殊な蛤です。特徴としては、形と目方との割合が普通の蛤と変わっていることです。それは日向灘という荒海の浜がこの一種変わった蛤を育てたようであります。荒波に対する抵抗を少しでも減少するために形は小さく整い、厚みを増し「重い」という変わった蛤となったと思われます。それらのことは、碁石としての好条件であり、特に縞目は細かく滑度の高い碁石となります。
使用しては、「見た目に美しく、純白でゆったりと流れた縞目の優雅さなどが独特の触感を感じさせます」
しかし昭和40年頃には、はや限度となり僅かに残存する状態になりました。その後、56年頃には代用としてメキシコ貝が主流となり現在普及されております。日向蛤の歴史は100年間程度であったようです。
現代の愛好家から垂涎の物になっている日向蛤は、元来小型の貝がほとんどで稀に大きめのものが発見されたようです。36号などそれ以上の厚みのものは貴重な価値のもので1組を揃えるためには、「心がけてから数年〜10年くらい年月を必要とする」と云われております。従って1号増すごとの稀少の差は想像以上で40号級のものは100年の間に数組に満たなかったようです。
ちなみに碁石(白石)サイズは、 36号…10,1o 37号…10,4o 38号…10,7o 39号…11,0o 40号…11,3oとなります。
なお、日向蛤が碁石としてこのような好条件を備えたのは発見されるまで数百年を地下に埋蔵されていたという点にあると思います。その殻質は風化を免れ生きたままの形で石化する過程にあったわけで、殻の硬質が現在棲息している蛤と違うところであります。 そのため、丈夫で手垢も付きにくい特性を持っています。